身に付けているだけで安心できる!ヘルプマークとは?
「ヘルプマーク」という言葉を聞いたことがありますか?
電車などで、イラストのような赤地に白抜きのハートとプラスがあるマークのポスターやステッカーを見かけたことはありませんか?
聞いたことがある人も、見たことがある人も、このヘルプマークが何のためのマークかを知っていますか?
もしも、あなたが心臓発作が起きるような病気だったとしたら、一人で外出するのが怖くならないでしょうか?
急に発作が起きて倒れるのではないかと不安になりますよね。倒れた時に誰かに助けてもらえるか、病院で適切な処置をしてもらえるか、心配になってしまうと思います。不安のせいで、人と一緒ではないと外出できなくなってしまうこともあるでしょう。
ヘルプマークは、そんな不安を安心に変えることができる全国共通のマークです。
今年の7月には、NHKのテレビ番組「あさイチ」でも取り上げられ、そこで初めて目にした方も多いのではないでしょうか。
各自治体でも急速に導入が広まっている、このヘルプマークについて、作られた経緯や配布場所などをお伝えしていきます。
目次
1.ヘルプマークとは
ヘルプマークとは、援助や配慮を必要としていることが外見からはわからない方たちが、そのことを周囲に知らせることができるマークです。
義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方、そして発達障害がある方などは、外見からは障害の有無がわかりません。
目に見えない障害を持った方たちは、周囲からの理解が得られにくいことから、日常生活の中で生きづらさや不自由を感じる場面が多いといいます。
また、体調の急変時や災害などの緊急時に適切な処置や支援を受けられるかが不安だったりと、日頃から抱えているストレスや悩みは決して小さいものではありません。
ヘルプマークはそんな援助や配慮を必要としている方たちが、援助を必要としていることを周囲に知ってもらうことで、理解や支援を得やすくなるように作成されました。
最近ではTVで取り上げられたり、公共機関で掲示されたりと、認知が広がってきました。しかし、まだまだヘルプマークの存在を知らなかったり、見たことはあるけれど何を意味するマークかを知らない、という人の方が多いのが現状です。
まずはヘルプマークが誕生した経緯から見ていきたいと思います。
2.ヘルプマークの歴史
ヘルプマークの生まれは2012年で、右脚に人工股関節を入れる東京都議会議員の山加朱美が、『外見から障害者と分からない人は、日常生活でさまざまな不便を強いられている。統一マークを作り、理解促進を』と提案したところから生まれました。
デザインは、サントリーの緑茶飲料『伊右衛門』などの広告で知られるアートディレクターで、博報堂デザイン社長の永井一史さんが手掛けており、『道路標識のように、見ただけでコミュニケーションできるデザインを』と発信力のある赤をベースに、白の十字とハートを組み合わせて作られています。製品化にはプロダクトデザイナーの柴田文江さんも参加しています。
《東京新聞 刊より引用》
ヘルプマークは東京都から発信されたマークです。
2012年10月、東京都は現在よく知られるようになったストラップ型ヘルプマークの配布や、都営地下鉄大江戸線の優先席へのヘルプマークステッカー標示を開始しました。翌2013年からは地下鉄全線に加えバスなど他の公共機関にもステッカーの標示が広がり、現在では全国区の自治体へと展開しつつあります。
2017年にはJIS Z8210(案内用図記号)に採用されたことで、ヘルプマークは正式な全国共通のマークとなりました。案内用図記号とは言語を使用しない案内形式で、日本人以外の外国人観光客でも、わかりやすい案内を可能にするものです。
3.ヘルプマークの対象となるのは
ヘルプマークを利用できるのは、義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としていることが外見からはわからない方たちです。
対象となる障害や症状には、特に基準は設けられていません。以下にあげる障害や症状をお持ちの方以外でも、援助や配慮が必要でお困りの方が対象となります。
ヘルプマークが利用できる対象者の一例
- 義足や人工関節を使用している方
- 内部障害【心臓機能障害、腎臓機能障害、呼吸器機能障害、肝臓機能障害、膀胱機能障害、直腸機能障害、小腸機能障害、免疫機能障害(HIV)など】や難病の方
- 精神障害【知的障害、総合失調症、うつ病、双極性障害、気分障害、パニック障害、不安障害、性機能障害、薬物依存症など】の方
- 発達障害【ADHD(注意欠陥障害、多動性障害)、自閉症など】の方
- 妊娠初期(〜妊娠4ヶ月)の方
ヘルプマークを受け取るにあたり、申請書や身分証明書は必要ありません。診断書や障害者手帳も不要です。
窓口での口頭の申し出だけで受け取ることができる自治体が多いようですが、一部の自治体では書類の提出が必要ですので、事前にご確認ください。
窓口での受け取りは、利用者ご本人以外のご家族や支援者などの代理人でも可能です。
4.ヘルプマークはどこでもらえるの?
2012年に東京都から始まったヘルプマーク。
全国ヘルプマーク普及ネットワークによると、2018年9月25日時点で30の都道府県にヘルプマークが導入されています。
今はまだ導入されていなくても、来年以降の導入が予定されている地域もあります。
導入されている自治体や、導入予定の自治体の最新情報は全国ヘルプマーク普及ネットワークのホームページで確認することができます。
参照:https://www.skart-tokyo.com/p/18/
ヘルプマークの配布は窓口のみで行われ、郵送による配布には対応していない自治体がほとんどです。一部自治体では郵送可能となっていますので、お住まいの自治体のホームページ等でご確認ください。
5.ヘルプマークが手に入らない時は
全国区で普及が進んでいるヘルプマークですが、未導入の地域や窓口のある施設から遠方に住まわれている方など、ヘルプマークを必要としているのに入手できないというケースもあるかと思います。
入手できずにお困りの方には、ヘルプマークの自作をおすすめします。
東京都福祉保険局が掲示するガイドラインに添った形あれば、ヘルプマークを自分で作ることが許可されています。利用者ご本人が使用する場合であれば、作成にあたっての特別な申請も必要ありません。(それ以外の用途での作成は確認が必要になるケースもありますので、東京都福祉保険局に相談するのが好ましいです。)
配布されているストラップ型のヘルプマークと同じ素材で作ることは難しいため、ガイドラインのデータをカラー印刷して切り抜くのが一番手軽な方法だと思われます。素材が紙になるので、耐久性を上げるためカードケースなどに入れて使うとよいでしょう。
参照:http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/helpmarkforcompany/download.html
6.ヘルプマークの使い方と効果
自治体で配布されているヘルプマークにはストラップが付いているので、カバンなど周囲から目に入る場所に付けることをおすすめします。
ヘルプマーク本体と一緒にシールが同封されています。必要としている援助や配慮をシールに記入し、ヘルプマークの裏面に貼っておくことで、適切な支援を受けることが可能になります。
シールには必要があれば緊急連絡先や病気の名前、服用している薬などの情報も書いておくことをおすすめします。急に具合が悪くなった時や災害時など、自力でコミュニケーションが取れない状態になった時に、早い段階で適切な処置が受けられるメリットがあります。
また、上記のような具体的な支援を知らせるだけでなく、「理解して欲しい」「認めて欲しい」「ほんの少し配慮してもらえたら」という意思表示の役割もヘルプマークは持っています。
外見からはわからない障害や症状を持っている方には、公共機関の利用に困難や不安が伴う場合があります。
疲れやすかったり立っているのが大変だったり、人混みで気分が悪くなりやすいなど、人によって様々なケースがあります。
一見元気そうに見えてしまうため、混雑した電車やバスの優先席に座っていると、「若いのに」「年配の方が立っているのに」などと誤解を受けやすく、つらい思いをしたという声が聞かれます。
そのような公共機関を利用する際などにヘルプマークを身に付けることで、周囲の方に事情を察して理解してもらう手助けとなります。
また、発達障害を持ったお子さんが特性のため落ち着きがなかったり、公共の場で大きな声を出してしまうといった場合でも、ヘルプマークを付けることで理解されやすくなる効果が期待されます。
迷子になりやすいお子さんは、連絡先を書いたヘルプマークを持たせることで、迷子札の代わりにもなります。
ヘルプマークは利用したいけれど、人から視線を向けられることに抵抗があるという方は、普段はカバンの内側にヘルプマークをさげておき、必要な時にだけヘルプマークを掲示すると良いでしょう。
7.ヘルプマークを見かけたら
ヘルプマークの普及が進み利用者が増えても、周囲の認知や配慮が得られなければマークが活用されたとは言えません。
ヘルプマークを身に付けた方を見かけた際には、電車・バス内で席を譲る、困っているようであれば声をかけるなど、思いやりのある行動をお願いします。
〈ヘルプマークをみかけたら〉
電車・バスの中で、席をお譲りください。
外見では健康に見えても、疲れやすかったり、つり革につかまり続けるなどの同じ姿勢を保つことが困難な方がいます。 また、外見からは分からないため、優先席に座っていると不審な目で見られ、ストレスを受けることがあります。
駅や商業施設等で、声をかけるなどの配慮をお願いします。
交通機関の事故等、突発的な出来事に対して臨機応変に対応することが困難な方や、立ち上がる、歩く、階段の昇降などの動作が困難な方がいます。
災害時は、安全に避難するための支援をお願いします。
視覚障害者や聴覚障害者等の状況把握が難しい方、肢体不自由者等の自力での迅速な避難が困難な方がいます。
《東京都福祉保健局HPからの引用》
今では広く知られるようになったマタニティマークのように、ヘルプマークもたくさんの方に認知されることで、援助が必要な方たちも生きやすい世の中にしていきたいですね。